ECサイト運営者にとって、サイトの刷新や機能改善は大きな課題です。特に、EC-CUBEなどの自社運営型カートから、利便性と柔軟性を求めて「クラウドEC」への移行を検討するケースが増えています。クラウドECは、サーバー管理の負担を軽減し、スケーラビリティを備えた効率的な運営が可能な新たな選択肢です。
本記事では、クラウドECの基本から、ASP(SaaS)型との違い、メリット・デメリットを解説し、Shopifyなどのおすすめカートシステムも紹介します。クラウドEC導入の判断材料として参考にしてください。
1. クラウドECとは
クラウドECとは、クラウド上のプラットフォームを利用してECサイトを構築・運用できるサービスです。従来の方法には、自社でサーバーを管理する「オンプレミス型」や、ASP(SaaS)型サービスがありましたが、クラウドECはより柔軟で使いやすいのが特徴です。
クラウドECの大きな利点は、サーバー管理が不要な点です。オンプレミス型では、サーバーの購入やメンテナンス、セキュリティ対応が必要でしたが、クラウドECではこれらの作業をクラウド側が行うため、運営者は商品販売やマーケティングに集中できます。さらに、セキュリティ更新や新機能の追加も自動で行われるため、常に最新の状態を維持できます。
また、クラウドECはアクセスが急増しても安心です。セールやキャンペーンでアクセスが増えても、クラウドが自動でリソースを増やし、スムーズな購買体験を提供します。従来のシステムでは、サーバーの増強が必要でしたが、クラウドECならその心配はありません。
このため、EC-CUBEなどの自社運営型カートを使用している方には、クラウドECへの移行は負担を減らし、柔軟性を高める良い選択肢となるでしょう。次章では、クラウドECとASP(SaaS)の違いについて詳しく説明します。
2. ASP(SaaS)との違い
クラウドECとASP(SaaS)は、どちらもECサイトを運営するためのサービスですが、運営の仕組みやカスタマイズの自由度、費用に違いがあります。ここでは、両者の違いをわかりやすく説明します。
ASP(SaaS)とは
ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)やSaaS(ソフトウェアアズアサービス)は、必要なソフトウェアや機能をインターネット経由で提供するサービスです。ユーザーは、プロバイダーが用意したシステムを利用するだけで、サーバー管理や設定をする必要はありません。基本的なカスタマイズができ、短期間でサイトを立ち上げたい事業者に向いています。
クラウドECとASP(SaaS)の違い
クラウドECもクラウド上でシステムを使いますが、管理方法やカスタマイズ性でより柔軟なのが特徴です。
管理方法の違い
- ASPやSaaS型では、プロバイダーがすべてのシステムを管理しており、ユーザーが設定を変更する自由はほとんどありません。固定されたテンプレートや機能を使って運営します。
- クラウドECでは、プロバイダーが基本管理を行いつつ、ユーザーがアプリやプラグインを追加したり、機能をカスタマイズできるため、成長に合わせた柔軟な対応が可能です。
カスタマイズ性の違い
- ASPやSaaSは、業種や事業規模に合わせたテンプレートが豊富で、すぐにサイトを構築できますが、独自の機能やデザインの自由は限られます。
- クラウドECは、プラグインやAPIを活用して独自の機能を追加できます。例えば、Shopifyでは、専用のアプリストアから顧客管理や売上分析のツールを簡単に追加でき、カスタマイズが容易です。
コストの違い
- ASP(SaaS)型は月額費用が固定で、初期費用が低いのが特徴です。ただし、カスタマイズが限られているため、規模が拡大すると対応が難しく、別のプラットフォームに移行する場合もあります。
- クラウドECは、初期費用や月額費用がサービスによって異なりますが、長期的にはコストパフォーマンスが良いことが多いです。必要に応じてリソースを調整でき、無駄な費用を抑えながら成長に対応できます。
クラウドECとASP(SaaS)は似た仕組みを持っていますが、カスタマイズの自由度や費用面で異なるため、事業の状況に応じた選択が大切です。
3. クラウドECのメリット・デメリット
クラウドECは、オンプレミス型やASP(SaaS)型と比べて、柔軟性や効率が向上する多くのメリットがあります。しかし、デメリットもあるため、導入する際には両方を理解することが大切です。ここでは、主なメリットとデメリットを紹介します。
クラウドECのメリット
- 運営の手間が減る
クラウドECは、サーバーの管理やメンテナンスをサービス提供者が行うため、運営者はシステム管理の負担が軽くなります。そのため、販売やマーケティングにより多くの時間を使用できます。
- 自動で最新機能が導入される
クラウドECは、アップデートやセキュリティ対策が自動で行われるため、常に最新の機能を利用できます。運営者が手動で更新する手間が省け、最新技術を取り入れやすいです。
- 多様な機能を簡単に追加できる
クラウドECでは、専用のアプリストアから必要な機能を簡単に追加できます。顧客管理や売上分析など、ニーズに合わせたカスタマイズができ、事業の成長に対応可能です。
クラウドECのデメリット
- カスタマイズの制限
クラウドECは、提供者の仕様に基づいたシステムのため、細かいカスタマイズが難しい場合があります。EC-CUBEのような独自の機能追加が必要な場合には不向きなこともあります。
- 長期的なコストがかさむ
クラウドECは、初期費用が低い反面、月額利用料やアプリの追加費用がかかるため、長期的にはコストが増えることがあります。導入前にコストを試算しておくことが大切です。
- サービス停止のリスク
クラウドECはクラウドサービスに依存しているため、障害や停止が発生した場合、サイトの運営が一時的に停止するリスクがあります。特に、運営中の障害が売上に影響する業種では注意が必要です。
クラウドECは、運営の手間を減らし、最新の機能を活用できる便利な選択肢ですが、事業の状況や目標に応じてデメリットも考慮する必要があります。
4. クラウドECのおすすめカートシステム
クラウドECを導入する際には、事業規模や目的に合ったカートシステムを選ぶことが重要です。ここでは、日本で人気のある4つのクラウドECカートシステムを紹介します。特徴を比較して、自社に最適なシステムを見つけましょう。
1. ebisumart(エビスマート)
ebisumartは、国内企業に広く利用されているクラウド型ECカートシステムです。高いカスタマイズ性と多機能性があり、BtoB・BtoCの両方に対応可能です。大規模サイトでも柔軟に対応でき、他の業務システムともスムーズに連携できます。
主な特徴
- 高いカスタマイズ性
- BtoB・BtoCの両対応
- 豊富なAPI連携機能
メルカート
メルカートは、拡張性とコストパフォーマンスに優れたカートシステムです。操作性に優れ、初心者でも扱いやすく、デザインテンプレートも充実しています。初めてECサイトを立ち上げる企業や、コストを重視する中小企業に適しています。
主な特徴
- 優れたコストパフォーマンス
- 使いやすい独自のカートシステム
- 初心者向けのデザインテンプレート
- 大規模ECシステム「ecbeing」のセキュリティ環境と同じものを利用
- 24時間365日の常駐サポート
aiship(アイシップ)
aishipは、スマートフォン向けに特化したカートシステムです。モバイルファーストの設計で、レスポンシブ対応が整っており、スマホからのアクセスが多いビジネスに最適です。スマホからも管理画面が操作でき、どこでも運営が可能です。
主な特徴
- スマホ特化の設計
- レスポンシブ対応で幅広いデバイスに対応
- スマホからの操作も簡単
makeshop(メイクショップ)エンタープライズ
makeshopエンタープライズは、大規模サイト向けのクラウドカートシステムです。大量のアクセスや商品点数に対応でき、成長に合わせた拡張が可能です。標準搭載のマーケティングツールやCRM機能もあり、集客や売上向上をサポートします。
主な特徴
- 高いスケーラビリティ
- 充実したマーケティング・CRM機能
- 大量の商品やアクセスに対応可能
これらのカートシステムは、それぞれ異なる特徴を持っており、自社のニーズに合ったものを選ぶことで、効果的なECサイト運営が可能になります。
5. まとめ
クラウドECは、従来のオンプレミス型やASP(SaaS)型に代わる柔軟で拡張性の高いサービスとして注目されています。サーバー管理の負担軽減やスケーラビリティ、最新の機能を自動で利用できる点が大きなメリットです。ただし、カスタマイズの制限やクラウド依存のリスクもあるため、事業の特性に応じた選択が重要です。紹介した各カートシステムの強みを活かし、効率化と顧客満足度の向上に繋げられるよう、クラウドECの導入を検討してみてください。